よくある話

　ネットとか噂を聞き、面白半分に心霊スポットに向かった。そこで、一緒に行った一人の様子がおかしくなった。
　よくある話だよな、それは。
　慌てて逃げたけれど、車中でありえない怪現象が起きた。それもまぁよくある話だ。
　後日、お寺や神社へ行ったり、ツテを頼って会うことのできた霊能者に見てもらったり、なんてのもよくある話。
　その結末が、無事救われて『これからは面白半分に心霊スポットには行きません』となるのも、お祓いの効果虚しく、いまだに友達は霊現象に悩まされてる、となるのもよくある話だ。
　でも、ネットの噂を聞いて心霊スポットに向かう途中、同行者全員がおかしくなり、道路の真ん中に停まった車の中から正気とは思えない全員が発見され、いまだ、搬入先の病院でおかしなまま…っていうのはよくある話じゃないと思う。
　ちなみに、今この話を世間に伝えている俺は何ものなのか。
　世界の怪談のほとんどは、当事者とは無縁の『第三者視点』で展開することが多い。
　どんな不思議も、第三者視点で淡々と綴られていたら、それは創作の『よくある話』に分類されるだろう。
　この話もきっとカテゴライズはそこだ。
　でもそれでいいよ。
　誰かがでっちあげた創作怪談。そう思ってくれた方が、この話を流してる俺には色々と都合がいいからな。
　どこにでもよくあるインチキ怪談。だから信じずにいてくれよ。そんな怪現象は、これをどこかで読んでいるキミの身の上には決して降りかからない。
　だから安心して、怖い話を読み漁り、時には心霊スポットなどにも赴いてくれ。

よくある話…完