帰り道

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 私はその頃、外来でパート看護師をしていた。  パートだけど弟の死で休みはもらえた。  職業柄バレるだろうから死因も師長には報告した。  医療従事者は、淡々としている。そうでないとやっていけないからだ。  外来には沢山の人がくる。  持病がある人は大変だが、少し風邪っぽいからとかそんなことで病院に来る「生きている人たち」が憎らしく思えてきていた。  黙々と仕事をする私に配慮もなく、スタッフが談笑している。  ふと、あの感覚が滲み出てくるのを感じた。  最初はマッチを擦ること、焦げる臭い、それがジワジワと炎として広がる。  誰かれかまわず殴り倒したい衝動も沸いてきていた。  特にあの弔辞を読んだ上司。  あいつの頭を蹴り飛ばしたい・・・。  消えろ。  みんな、消えろ。  みんな、死んじまえ。  お前が死ね。  お前が消えろ。  馬鹿野郎。  弟の遺書らしきものに書かれていた二人の男も、殺したくなった。  私は感情がコントロールできないような感覚に深く深く、陥っていった。
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