1人が本棚に入れています
本棚に追加
・・・記憶が抜けている。
相変わらず空は抜けるようにどこまでも青い。
覚えているのは、母親や叔母と電話で話したこと、そして母親が職員と現地へ向かったこと、まだ対面もしていないのに私は葬儀場を調べたことだ。
夕刻になり、警察から電話が入った。
「お姉さん?弟さん、血液検査で一酸化炭素中毒死確定、車内で練炭も炊いていたから自殺ということで間違いないと思います」
すごみのある言い方だった。
「なんで弟が・・・」
私は思わず声が漏れた。
「お姉さん!しっかりしなさい」
警察官の言葉はとても冷たく、叱り飛ばされた。
一瞬、心のどこかにマッチを擦った時のような感覚が走った。
他にも弟であることを証明する説明をしていたが、事務的な程度に呆れながらもメモを取り、何かが焦げていく臭いすらしてきた。
私が行くべきだっただろうか。
そして弟に会い、警察官を睨みつけてやればよかった。
でも、怖かったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!