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出棺の朝。
棺の中には弟への手紙や好きだった本などを入れた。
そしてこれほど辛いことがあろうか、棺に石で釘を打つ。
私は一人で泣いていた。
夫や子供たち、母とも離れ、とにかく一人で棺を見つめていた。
誰とも悲しみを共有したくなかったのだ。
自分の家族でさえ、鬱陶しいとすら感じた。
それらしく白い手袋をして正装した彼らは棺をかつぐ。
まるで映画のワンシーンのようだ。
そんなことされても嬉しくもない。
これから彼は肉体まで無くなるというのに。
そして得意の一斉敬礼で見送られた。
この中で本当に悲しんでくれている人は、何人なのだろうか。
発見してくれた人たち、弟の話をしてくれた後輩、弟と仲良しだった後輩、弟がお世話になった一人の先輩、くらいじゃないだろうか。
「おまえらも きえろ」
車の中で揺られながら、私の心はくすぶり続けていた。
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