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自分でも嫌になるほど人づきあいがへたくそだと思う。
リフレクションになって自ら独りになることを選んでばかりいたからだ。
それでも、きちんと向き合いたかった。
林田さんのいうように私の命は明日終わってしまうかもしれないのだから。
この後悔をあの世にまで持っていくわけにはいかない。
次の日、私は重い足取りで浜辺へと向かった。
「あ、璃子ちゃん、やっほー」
林田さんは手をひらひらと振る。
そのそばに昨日のギターの姿はなかった。
「ちゃん付けやめてください」
不機嫌さを装いながら、いつもと変わらない態度で接してくれる林田さんにほっとした。
「じゃあ璃子でいいよね?」
私は首を縦に振った。
林田さんは嬉しそうに笑う。
本当によく笑う人だ。
その笑顔を見ると、胸の奥がぎゅっと締め付けられるような、火花が弾けるような感覚がする。
「あの……昨日のことなんですけど……」
「うん?」
なかなか言い出せない私を林田さんはゆっくり待っててくれた。
リフレクションの経緯を一通り話す。
誰かにリフレクションのことを話すのは初めてかもしれない。
知られたくなくて、うやむやにしてきたから。
「そっか、そうだったんだね……俺、本当に無神経でごめん」
林田さんは眉をㇵの字にして謝った。
「いいんです。仕方ないことですから」
私がそういってから、二人の間に沈黙が降り注いだ。
ザザーンとよせては返す波の音だけが沈黙を埋めていく。
夕暮れにはまだ早くて、夏の強い日差しが額に汗をにじませる。
「そうだ! 今日は灯台に行ってみようよ」
林田さんは名案を思いついたかのように、勢いよく立ち上がった。
「灯台?」
「うん。あそこ見て」
私は林田さんの指差す方向を見る。
少し遠くの岬にろうそくのような細長い建物が立っているのを確認できた。
「さあ、行こう」
「行くって何で?」
「俺のバイク」
「え?それってまさか……」
「そのまさか!」
林田さんは満面の笑みで言った。
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