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どうしてこんなことに……。
私は今、林田さんのバイクの後ろに乗せられている。
つまりはとても密着した状態なわけで……。
背中から伝わる体温と髪から漂うシャンプーの香り、それとちょっとの汗のにおい。
風を切って進むバイクの上で、心拍数は確実に上昇していた。
散々バイクに乗ることを渋ったが、林田さんの「もうこんな経験は一生できないかもよ?」という一言に根負けして乗ることになってしまった。
「着いたよ」
バイクに乗っている間、目をつぶって何とかやり過ごしていた私はハッとして、目を開ける。
そこにはいつもより近い夕日があった。
「奇麗でしょ?」
「うん……」
「灯台に上ろう。もっとよく見える」
私は林田さんの後を追う。
灯台は思ったよりも高く、そこから見る夕焼けは絶景だった。
海は宝石のオレンジジュースを零したみたいな色に染まっている。
まるで海の真ん中に立っているような感覚になる。
私の隣で林田さんはカメラのシャッターを一心に切っていた。
「来てよかった……」
自然に口からその言葉は零れ落ちた。
「でしょ? 嫌なことがあるとここによく来てた。でも、今は璃子とのいい思い出に変わったよ」
どうしてそんなに恥ずかしセリフをサラリと言えるのだろう。
やっぱりつくづく林田さんはチャラ男だ。
林田さんは病院まで私を送り届けると、去り際に耳元でささやいた。
「明日は19時半に浜辺、集合。待ってるから」
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