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雪視点
伊吹ちゃんが行ってしまった後、私はぬらりひょん
さんに声を、かけた。「大丈夫ですかね、
伊吹ちゃん…」「そう見えると思うか?」ぬらりひょん
さんの顔は先程より曇っていた。「いいえ、
思えません。あの子の心は、体は…」その先は
言わなくても分かる。壊れかけている。だから…
「だから、あの子には幸せになって欲しいんです。
私の代わりに」今でもあの記憶が蘇る。「お前も
幸せになっても良いんじゃないのか?」
この人は私のしてしまったことを知らない。
だから、そう言えるの。その時、強い風が吹いた。
思わず髪を抑えた。そして、ある木の枝を見た。
そこには長い黒髪を結った青年がいた。「烏天狗…」
その名を呟いた。彼からは異様な気が感じられる。
表情は暗く、眉を顰めていた。彼は自分が守りたか
ったと思っているのだろう。だから、あんな顔をして
いる。私だって同じだ。何もできない…。ただあの子を
見送るしか出来ない。私は暫くその場に立っていた。
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