「奴隷の少年と女王」

2/3
前へ
/3ページ
次へ
「アンリエッタ女王陛下ばんざーい!」 「王国に平和あれー!」 「アンリエッタ陛下様ぁー!」  バルコニーから手を振るう。 「きゃっー!」 「女王様ー!!」  広場にいる民たちから喝采が飛んでくる。  奴隷解放戦争から十年後。  この国は生まれ変わった。  奴隷制度を廃止し、商業革命を引き起こした後、他国に負けない国力を蓄えるまでに至った。  女王の名の下に民は強く結束してくれたが。  そのおかげでこうして祭典の度に顔を出さなければいけない始末。 「ふぅ」  バルコニーから顔を引っ込めて椅子に腰かける。  是正の為に厳しい顔つきをするよりも、平和を維持する為に笑顔でいることの何と大変なことか。  そんなことを考えていると、広場がにわかに騒がしくなった。 「きゃあっ!」 「うわっ!?」  民たちの悲鳴が響く。  広場からいくつもの影たちがバルコニーに飛び移ってきた。 一瞥して理解する。  それは女王政権を良く思わない者たちが送ってきた暗殺者だ。 「国賊アンリエッタ! その命貰い受ける!」 「死ねぇい!!」  暗殺者たちが襲い掛かる。 「ふぅ」  思わずため息が漏れそうだった。  椅子から立ち上がることなく私は目を瞑った。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加