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心のまま求め合っていたらもう朝になっていた。思ったより時間がなくて慌てて準備してホテルを出て、チェックインを済ませて国際線出発ロビーへと向かった。
ガラス張りに飛行機が離発着していく光景が目に映る。晴れ渡った青空に向かって、白い塊が悠々と飛んでいく。
「薬飲んでおく」
彼はベンチに座って薬を服用する。どうしても飛行機に乗らなくてはならない際は強い睡眠薬を飲んでなんとかやり過ごしているのだそうだ。睡眠薬って、ぐっすり眠るというよりかは強制的に意識が途絶えるという感じで体に良くない。それでも寝ていれば恐怖は感じないだろうが、飛行機に乗るというストレスは計り知れないだろう。
「かなり強い薬だから着いて起きれなかったら、法子おんぶしてってくれる?」
「無理だよーっ。無理やり起こすね!」
「じゃ、キスして起こして」
「えっ。キス? いいの?」
「いや冗談だし」
軽い微笑みの中にある深い影。心配かけないように無理して笑っているのが伝わってきてしまった。私を迎えに来るためにまた飛行機に乗らせてしまって申し訳ない気分になった。
きっと魂を削る思いで飛行機に乗っているに違いないのに……。
「ごめん、ちょっとお手洗い行ってくるね!」
「もう搭乗だよ。急いで」
「うん! すぐ帰ってくる!」
膀胱をぎゅっと圧迫されているような感覚があってベンチを離れた。個室に入って便座に座って一息。さっきもトイレ行ったのにまたもよおすって、妙に近い。
「ん?」
そこで気づいた。私、生理いつきたっけ……?
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