1.悪夢

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1.悪夢

1.悪夢  私は2階の部屋にいるらしい。……らしいと言ったのは、曇りガラスを通して見ているようで遠近感がないからだ。  しかも、とても暗い。  私は明かりを探すように天井を見た。天井から小さなランプがたくさん付いたシャンデリアがぶら下がっている。その数は20個以上ありそうだが、光量は蝋燭1本にも満たない。  なぜシャンデリアがぶら下がっているのか? 自分の部屋でも、今まで訪れた部屋でもないことは確かだ。目の異常なのか? 私は目を擦ってみるが変わらない。  窓の外で何かがざわついている。嫌な予感がして戸を閉めると、ざわつきは収まった。外で木の葉が風で揺れていたのだろうと思った。静かになると、窓枠の上部に何かがタオルに巻かれているのに気づいた。  私はタオルで巻かれた物を窓枠から引き抜こうとした。刃渡り20センチ位のナイフだった。素手でナイフを掴んでいた。右手が真っ赤になり、私は恐怖で叫んだ。  その瞬間、目が覚めた。  私は起き上がろうとしたが、後頭部に鈍痛が走って両手で頭を抑えた。気分が悪い。体がだるく、節々も痛い。脈も乱れているのがわかった。  夢は目覚めた時に忘れていることが多い。悪い夢を見たと思ってもその内容までは覚えていないものだ。  しかし、今朝の夢は実際の出来事のようにはっきりしている。  私はしばらく頭を庇うように両手を離さずにいた。あの部屋とナイフは何を意味していたのかと考えながら。  頭の痛みは和らいでいった。すると、今度は首が棒になったように固くなっているのがわかった。私はゆっくりと首を動かした。脛骨が擦りあってきしむ音がした。その音を聞いて、夢ではないとわかった。  私は無意識で腹に手を当てた。微かにザラツクような痛みがある。私はシャツを上にあげて腹を見た。  青あざがいくつもあるが、どこでできたあざなのか、思い出せない。  
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