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11.男の秘密
11.男の秘密
私が、目覚めると病院のベッドだった。
美しい妻と娘、医者、見知らぬ男がいた。
「あなた、大丈夫?」妻が手を握って言った。
「パパ。大丈夫?」娘が泣き出した。
私は子供の頭を撫でようとした。
その瞬間、高圧線に触れたようなショックを受けた。
子供の父を奪った男の手に、神の罰が下ったような気がした。
私は、男が帰宅する姿を見て、親子に暴力を振るっていると思っていた。そう思う事で殺人の罪悪感を薄めようとしていた。だが、ベッドの前で、二人が涙を流している。男が良き夫であったことに間違いはなかった。
私は、親子の姿に取り返しのない罪を犯したと思った。
「わかるか?」
男が勤める会社の林部長だった。
私は、記憶が無いと言った。
「先生、主人は?」
妻が心配して医者に聞いた。
「足の骨折は3ケ月で回復するでしょうが、事故で記憶障害があるようですね。記憶の回復は時間がかかるかもしれません」
医者が言った。
その後、妻は毎日のように病院に見舞いに来てくれた。
私はベッドの中で、毎日妻に質問を繰り返し学習した。
つじつまが合わなくなると、事故の後遺症のせいだと言った。
私は3ケ月後に退院し、男の自宅に戻った。
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