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14.殺人と贈収賄事件
14.殺人と贈収賄事件
帰宅するため地下鉄に乗ろうとした時だった。
売店の前に並んだ週刊誌の見出しが目に入った。
『特養老人ホーム許認可で賄賂か?』
私は、その雑誌を買おうと立ち止まった。
その時、見張られていることに気づいた。
悪事を働くと、警察の臭いに敏感になるのかもしれない。
部長の言葉が頭をよぎった。捜査が水面下で進んでいる。
やがて、A事務次官の運転手が任意で取り調べを受け、料亭で会食したことを白状した。
しかし、警察の任意聴取でA事務次官、社長、部長、私は、会食しただけだと口裏を合わせ白状しなかった。
何の証拠もなしに、運転手の証言だけで逮捕することはできない。
警察も窮地に立った。
新聞も一斉に関係者の写真を載せ、警察の勇み足の記事を載せた。
暫くして、河川の防波堤で一緒にダンボール生活していた仲間が、新聞に載った男の写真を見て、そっくりな男が急にいなくなったと交番に届けた。
その情報は交番を通して警察署に伝えられた。
数日後、私が出勤するため、自宅のドアを開けると、黒塗りの車から男たちが降りてきた。私が出てくるのを待っていたらしい。
「特養老人ホーム建設の件で、警察までご同行願います」
若い刑事が言った。
「またですか。何か新しい証拠でも? 今日は忙しい。任意だよね」
私は何も知らない。白状できるはずもない。私は無視しようとした。
「新しい情報がありましてね。協力お願いしますよ」老練な刑事が前をふさいだ。
「すぐ、帰れるから」私は、見送りの出た妻と娘の顔を見て言った。
私は、不安になった。老練な刑事の声はすごみがあった。何かを掴んだ目だと思った。
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