7.男は別世界の人間

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7.男は別世界の人間

7.男は別世界の人間  ダンボール小屋に戻った。  横になってブルーシートを跳ねのけ、夜空を見た。  横になったことで、全身が弛緩し、心も安静になっていくのがわかった。背中に地面の冷たい感触が伝わってきて、好奇心が冷めていくのがわかった。  毎日、日雇いのアルバイトで自分を持て余していた。だから、ちょっと好奇心が動いて突飛な行動に出ただけなのだと思った。これ以上の深追いは相手から訴えられるかもしれない。  電車の男は、別世界の人間だと思い直し始めた時だった。  アルバイトの派遣先から電話が入った。 「いくら、バイトでも無責任だろ! 約束ぐらい守れないのか! また同じ事があったら、次の仕事はないぞ!」  アルバイト先の男は怒鳴り続けた。「一体いつのバイトの話だ?」と私は思ったが、「すいません」を繰り返した。話を聞いていて、2日前のバイトだとわかった。  私は情けなかった。かつては課長だった(はずだと思っている)男が、ダンボール小屋で暮らしながら、日雇いの仕事をしている。もう一度、サラリーマンに戻りたいと思った。もっと、早く気づけばよかった。会社を辞めた時は多少の金は残っていたはずだ。節約できなかったのか? 何度も面接に落ちたが、仕事の内容を選ばなかったら、状況は変わっていたのではないか? 後悔しながら眠ってしまった。
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