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翌日からは警察に呼び出され、様々な尋問を受けた。 今や事態は、学校に不法侵入した不審者による生徒4人への暴行事件として扱われ、警察が捜査に乗り出していた。 警察がやたら力を入れているのは、どうやら小田切の親が警察関係に顔が効くからなようで、小田切の親から息子を暴行した犯人を是非とも捕まえるよう、警察は強く言われているらしい。 しかし私が、宙に浮いた板の上に小田切に乗せられて、あわや死にかけた事件の捜査は皆無だった。 小田切がすかさず私を脅して口止めしてきたからで、あの時、昼休みの屋上で小田切のグループのメンバーと私は仲良く歓談していたことにされた。 私は、3人があのバケモノのような巨人に投げ飛ばされるところを見ていたので、事件の重要な被害者にして目撃者として尋問を受けた。 私は出来るだけ見たままを警察に話したが、その前に私が宙に浮いた板の上に小田切に乗せられて死にかかっていたのを、あのバケモノに助けられたことは言わなかった。 警察の取り調べを終えて、夜遅くに帰宅すると、玄関には父がいて、いきなり私を往復ビンタした。 「今何時だと思ってるんだ!ああ!?」 父はまた、したたか酔っ払っているようで、かなり酒臭かった。 「ごめんなさい。警察の取り調べが長引いて…」 「お前は警察のお世話になるような悪いことをしたのか?」 「いえ、私も被害者で…」 「だが警察は俺のところにも話を聞きに来たぞ!俺が何をしたって言うんだ?!ああ?!お前なんかのために、警察に付きまとわれて俺の仕事に影響したらどうしてくれるんだ?!」 そう言うと、父は私に蹴りを入れた。 「ごめんなさい…」 「ごめんなさいで済むか!?お前なんかのせいで俺の人生ボロボロにされてたまるか!何ならお前、殺されちまえばよかったんだよ!」 「…。」 「ふざけやがって!お前なんかいらねーんだよ!お前なんかのために俺が何で働かなきゃならねえんだよ!」 父は今度はズカズカと近寄ってきて、すぐに私の腹を殴り出した。 息が出来ない。 吐きそうだ。 激痛で、声が出ないので腹に手を当てて、腹部を自らの微力で庇うことしか出来ない。 声が出ないから、まるで抵抗出来ない。 自らの身体を庇うことしか出来ず、父はひたすら逆上したように、酒臭い息を吐きながら、私を殴る蹴るし続けた。 激痛の中、徐々に意識が遠のいていく。 殴る蹴るされる激痛の刺激でかろうじて意識があるだけの状態になった。 このまま、死んでしまった方が余程楽だ… という思いが脳裏に渦巻いた…。 だが。 急に父からの殴る蹴るが止んだ。 そして、 すぐに父の悲鳴が聞こえてきたので驚いた。 いつの間にか目の前に、父はいなかった。 思わず、辺りを見渡すと、そこには何故か… あの巨体のバケモノが、そこに居た。 バケモノは、父を床に叩きつけてから馬乗りになり、ひたすら父を殴り続けているのが見えた。 父は最初こそ悲鳴を上げていたが、次第に何も言わなくなり、ひたすらバケモノに殴られ続けていた。 バケモノはしばらくすると、ぐったり血まみれになっている父の身体の上から起き上がり、最後に父の身体を蹴り上げて壁に叩きつけてから、ひっそりと家を出て行った。 私はしばらく血まみれで倒れている父の身体を見ていたが、すぐに119番通報して救急車を呼んだ。
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