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「まったく、どいつもこいつも俺をバカにしやがって」
1人の少年が、木々の鬱蒼と生い茂る暗く深い森を前にして呟いた。少年の視線の先には小枝や石、枯葉が散らばっていて、雑草は隙間なく生え、馬車道はもちろん獣道さえ見当たらない。
深みのあるブラウンの髪と瞳をもつ、精悍な顔をした少年。黒のロングブーツに深緑色のベスト、グレーのマントの装い。腰には平民には持ち得ない立派な剣が携えられていて、高貴な身分であることが伺える。
少年が重そうな足を持ち上げ一歩踏み出そうとした時、まるで侵入を阻むかのように、突然の突風が吹き荒れた。木々が不気味にざめき、少年はじり、と半歩下がる。
しかし、雲に隠れていた太陽が顔を出したことで空高くから陽が差した。
「バケモノを倒して、絶対俺の事を認めさせてやるんだ」
少年は大きく息を吐くと、背筋をスッと伸ばして剣を撫で、森に足を踏み入れた。
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