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*** 「……誰?」 瞬間、少女の手にとまっていた青い鳥が1羽、木の枝を抜け空へと羽ばたいた。この不気味な森にまるで似つかわしくない、透き通るように美しい少女は、突然草陰から現れた少年を見て目を瞬いた。 少女はワインレッドのワンピースをすとんと着て、麻の靴を履き、胸には小さなペンダントを付けている。 少しひらけた場所に出たことで息をついた矢先の少年もまた、思いもよらない事態に戸惑い、言葉が出てこなかった。 森をさ迷い、ピカピカだった服は所々破れ、ブーツはもちろん、顔や髪まですっかり土で汚れている。高貴な雰囲気は消え、仕事後の農民のようだ。 「……お、お前こそ、誰だ? バケモノはどこだ?」 その言葉に、少女は息を飲んでから分かりやすく不快な顔をしてため息をついた。木の葉の隙間から差し込む光に照らされたベージュの長い髪を華奢な手でそっと撫で、傍の木に寄りかかる。
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