ベガ

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ベガ

私は人間ではない。 私は人間ではない。 そう、私は人間ではない。 ……人間ではない? 何故だ! 何故、私は人間ではないんだ! そんな理不尽な事、誰が決めた! そんな、まさか、私が決めたのか? 否、そんなはずはない、私は人間だ。 私こそが人間だ。 そう、私こそが人間なのだ。 ……思い出せ。 このイデタチ、言語や道具を操る様、二足歩行。 どれをとっても私は人間だ。 根拠がある。それに従っている。 これが人間だろう。 誰もが知っている。 犬を知らずとも、人間だけは有名だ。 私は、人間のツボを押さえてある。 まごう事なき人間なのだ。 誇って良い。 私だけが人間である。 それは間違いない。 私は、人間の定義なのだ。 私が、人間なのだ。 だから私は民衆に慕われる。 それを信じている者たちの為にも、 ここで動じてはならない。 今までずっと私は人間だった。これからもそうである。 その事実は、誰にも覆される事はない。 ……たとえこの赤ん坊が、 本物の人間だったとしても……だ。
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