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四年後
一月十七日、蒼海(あおい)と別れて今日で四年が経つ。
こうして墓石の形をした彼女に花を摘み、水をやり、声をかけるのも今日で四度目だ。
「最後に言葉を交わしてから今日で四年経つな、蒼海」
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「あっちでも毎日笑ってんのかな」
俺の中の四年という時間は、長いようで短く、儚い。
それは彼女と最後に過ごしてから四年だけではなく、出逢いから四年経つ時もそうだった。
幸せな時間というものは、自分の人生の中でも折り紙付きの短さである。
嫌な時間は時間が経つのも遅く億劫になってしまうのに、なぜだか幸せな時間は経つのが一瞬なのだ。
それは、誰かが言っていた「時間は偉大な医者」という言葉が皮肉にも核心を貫いてしまうほどだと。
俺は今年も帰路でそんなことをぼやいていた。
今日は蒼海が亡くなって四年が経つ日である。
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