四年後

1/1
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ

四年後

一月十七日、蒼海(あおい)と別れて今日で四年が経つ。 こうして墓石の形をした彼女に花を摘み、水をやり、声をかけるのも今日で四度目だ。 「最後に言葉を交わしてから今日で四年経つな、蒼海」 ・ ・ ・ 「あっちでも毎日笑ってんのかな」 俺の中の四年という時間は、長いようで短く、儚い。 それは彼女と最後に過ごしてから四年だけではなく、出逢いから四年経つ時もそうだった。 幸せな時間というものは、自分の人生の中でも折り紙付きの短さである。 嫌な時間は時間が経つのも遅く億劫になってしまうのに、なぜだか幸せな時間は経つのが一瞬なのだ。 それは、誰かが言っていた「時間は偉大な医者」という言葉が皮肉にも核心を貫いてしまうほどだと。 俺は今年も帰路でそんなことをぼやいていた。 今日は蒼海が亡くなって四年が経つ日である。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!