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 十五分ほど走れば、昔から何度も遊びに来ていた公園に到着した。この辺りでは大きめなこの公園はいつ来ても子どもや散歩中の大人で賑わっている。  カラフルな遊具を横目に隅に置かれたベンチの方へ向かい、二人掛けのそこに腰掛けると同時に、「しゅん!」と後ろから声を掛けられた。 「しゅうちゃん!」  振り向くと、秋一がにこにこと笑顔を浮かべていた。秋一は回り込んで僕の隣に座る。つい数か月前まで僕達はこの公園のすぐ傍にある家に住んでいたから、小さな頃から何度も此処で一緒に遊んでいた、思い出深い場所である。  今も学校が休みの日になると、こうしてこの公園で会っては喋ったり遊んだりしていた。僕と秋一は本当は会ってはいけないから、このことは母にも秘密にしている。 「ブランコが空いてるね」 「じゃあブランコまで競争だ!」 「あっ、ズルいよしゅうちゃん!」  駆け出した秋一に続き、僕は急いでブランコまで走る。運動神経に恵まれた秋一と違い、僕はかけっこが得意ではないのに。  秋一に遅れて僕もブランコに座り、息を整えながらゆっくりと漕ぎ始める。僕はブランコは激しく漕ぐよりも、こうしてゆらゆら揺れる方が好きだった。 「お母さんがね、しゅうちゃんの写真がないーって悲しんでたよ」 「そっか……」  僕の動きに合わせてぎ、ぎ、とブランコが軋む。 「しゅん、父さんみたいなジャーナリストになるんだって言って、よく写真撮ってたじゃん。一枚も持ってないの?」 「流石の僕も写真を持って来る余裕はなかったよ」 「そのリュックには入ってなかったのか」 「なかったね。これはそもそも、災害時用にベッドの隣に置いてたものだもの。真夜中にお母さんにすごい形相で叩き起こされた時、僕、地震かと思ってさ。これを引っ掴んで逃げただけでも偉いでしょ?」 「乾パンとか懐中電灯とか持って行っても仕方ないだろ」 「それだけじゃないよ。災害時に町の様子を記録できるよう、筆記具やカメラも……そうだ、カメラ!」  はっとして叫び、僕はブランコから飛び降りた。次いで隣で首を傾げている秋一を振り向く。 「レンズ付きフィルムが入ってた!」 「レンズ付きフィルム?」 「使い捨てカメラのことだよ。お父さんからもらった、使いかけのカメラ! 覚えてない?」  そこまで言うと秋一もぴんときたようで、「そうか」と両手を打った。 「元から入れてあった荷物は全部出して箪笥に仕舞ってあるから、今から取ってくるよ」  僕は言いながら公園の出口へと走る。周りで遊んでいた子ども達が何人か、不思議そうに此方を見た。僕は気にせず後ろをついてくる秋一を振り返った。 「残りを全部使い切って、現像しよう!」
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