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「やっぱりおにぎりは塩だよ」  公園のベンチに座り、今朝握ってきたおにぎりを咀嚼しながら言うと、隣に座る秋一は呆れた顔で「はいはい」と頷いた。  朝と昼の間のおやつの予定だったおにぎりだが、結局これが昼食になってしまった。 「しゅん、昔からそれ好きだよなぁ。塩むすびを海苔で巻いただけのおにぎりをそんな美味そうに食うの、俺の知ってる中じゃお前くらいだ」 「あげないからね。しゅうちゃんにはリンゴをあげたでしょ」  警戒しながら言うと、秋一は「いらないよ」とくすくす笑った。  水筒に入れてきた水を飲みながらおにぎりを食べ、今の生活や母の様子などを話していたらあっという間に三十分が経ち、僕達は再びカメラ屋へと向かって、あのレンズ付きフィルムで撮影したものを現像した写真を受け取った。 「どうだ? ちゃんと写ってるか?」  紙袋から写真を取り出すと、秋一がはらはらした様子で僕の手元を覗き込んだ。一年前の秋一の誕生日の光景と、今日撮った景色が綺麗に写っている。 「これ、お母さんにあげたらきっと喜ぶよ」 「そうだといいな」  秋一は眉を下げて照れたように微笑んだ。  ──ああ、今この顔を撮れたら、それはきっと僕や母にとって世界一の写真になっただろうな。  僕はそんな風に思って、手元にカメラがないことがひどく悔しくなってしまった。
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