4章

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 彼女はハッとして俺を押し退ける。 「……ここを御暇するので」 「何故」 「カルメン様と代わる為です」  あの馬鹿親辺りが無神経なことを言ったのだろう。 「父上に言われたか? 間に受けるなお前の居場所はここだ」  嗤う彼女の瞳が昏く濁っていた。 「エロンソ様はお優しいですね」  瞬間的に頭に血が昇る。   「優しくなどないお前しか愛していないんだ!」  両肩を掴まれたまま口を開けている妻に俺は諭した。 「俺は立場や体面に頓着しない。だが妻はお前が良い、代わりはいない。お前は?」  彼女は瞳を濡らし、俺の胸に顔を埋めてしゃくりあげる。 「私も……愛しています。初めて会った時から」  彼女の嗚咽が止まるのを待ち、俺は小さな顔を持ち上げ唇を吸った。 「ようやく営めるな、愛を」  紅く燃えた燭台の灯を、俺はそっと吹き消した。
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