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「こんな侮辱があってたまるか!」
残念ながら俺は父ほど国や領地に対してあまり誇りがない。
「まぁ冷静に考えたら、こんな小国の小領地の主の息子に可愛い娘を嫁がせるなんて大盤振る舞いができるカリンナ王ではないだろうな」
数年前にうちの国の王子に嫁に出すのを渋っていたのが記憶に新しい。
「だったら初めから言わなければ良いんだ! これは国際問題だぞ!」
この父は息子の眼を通して見ても、単純な気質で挑発に乗りやすい。
「……だからだろ。カリンナ王は、試しているんだよ。屈辱的な行為を前に、こちらがどう出るか……うちは軍事力じゃ足下にも及ばない。奮起したとこで黙殺するのはたわいもない。これは挑発だ」
父はその辺にあった紙切れを握り潰す。大事な書類でないといいが。
「小癪な……」
「……まぁいいだろう。貰うとは言ったが、俺はカルメン王女にそれほど執着がない」
父の部屋を後にしようとする俺は呼び止められる。
「どこへ行くんだ?」
「妻を迎えに行ってくる」
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