ご近所さん

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  「ご近所さん」なんていっても、もともと他人みたいなものだ。  ほんの偶然、近くに住むようになっただけのこと。  趣味も年齢も、出身地も全く異なり、共通の知り合いさえいない。 「たまたま近くの家に住む」という偶然の関わりがなければ、一生巡り合うこともなかったかもしれない間柄なんだ。近場に住む、「赤の他人の集まり」に過ぎないんだ。  ……少なくとも俺は、そう考えていた。だから、「ご近所付き合い」なんてものは、無用のものだと思っていた。当然のことながら、今の家に引っ越してきた時も、あいさつ回りなどには行かなかった。未だに、隣の家にどんな家族が住んでいるか全くわからない。今さら、知ろうとも思わない。  俺は、あんた方の暮らしや生活に興味がない。同じように、俺についても興味など持って欲しいとは思わない。出来ることなら、放っておいて欲しい。無関心でいてもらいたい。お互い、「他人どうし」なんだから。  少なくとも俺は、そう考えていた。「この日」が、来るまでは。
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