ミクロの世界を覗いたならば

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「はい?」 「いや、それは俺が言いたいんですよ」  いきなり問い返されて、橋本優紀は情けない顔になる。こっちだって信じたくないけど、あんたに報告しているんだ。そんな不満がありありと滲んでしまう。  すると、上司の門倉健太郎も渋々という顔で報告書と、それに添付された写真を受け取ってくれた。そして見返して 「間違いじゃないのか?」  と問い直してくる。 「俺も間違いだと思って何度も挑戦しました。しかし、あの板きれから出てくるデータはこれで、写真に写すとそうなるんです」  優紀は負けずに主張した。すると、嘘だろと思いつつも、健太郎はその写真を見直す。  どう考えてもあり得ない。いや、あってはならない結果だ。しかもこれ、発表したら大騒ぎになるレベルのものだ。  大学のとある一角。文学部歴史学科からの依頼でとある遺跡からの出土品の年代鑑定をすることになった二人は、そのデータと写真に首を捻り続けるしかなくなくなっていた。 「あの、一応SETIに連絡しますか?」 「嫌だね」 「いや、あの、個人的な感情論ではなく」  断固拒否を示す健太郎に、そんなことを言っている場合かと優紀は情けない顔をより情けなくする。  ちなみにSETIとは地球外知的生命体探査のことであり、正式な科学団体だ。
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