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昔はトンデモ科学とされた異星人探査だが、ノーベル賞でも話題になった系外惑星が大量に見つかる時代となり、どこかに第二の地球があるはずだと、俄然注目を集めている。
今、二人の目の前にある写真は、そんな異星人からのメッセージであるはずなのだ。
なんせ、普通に見ている分にはただの板きれ。それを分子顕微鏡で撮影するとあら不思議。何だか奇妙な文字列が現れたというわけだ。それが、健太郎が渋い顔で見つめている写真に写っている。
「たまたまだろ」
「たまたまで、この分子配列になるとは思いませんが」
「裏付けろよ。科学的に。どうにかしろ」
「いや、どうにかって」
どうにかしようと、すでに優紀は一週間格闘した。でも、駄目だったのだ。この不可解な文字列のような分子配列に相当する物質が、この世界には存在しない。
「いやでも、他の惑星からのメッセージなんて。しかも、古代の遺跡に紛れ込んでいただなんて、誰が信じると」
情けない顔をする優紀に向けて、発表する根性はあるのかと健太郎は目を鋭くする。
「ま、まあ、そうですねえ」
そう言われると困ってしまう優紀は語尾を濁してすでに逃げ腰だ。大体、この怖い上司に報告するのに一週間掛っているのだ。全世界相手の針の筵なんて、もちろん座りたくない。
「解ったら、誤魔化せ」
「いやあ、まあ」
誤魔化せと言われても、歴史学科の人たちだってあの板きれだけおかしいと持ち込んできたのにですか。そんな気分だ。
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