ミクロの世界を覗いたならば

3/4
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「そもそも年代測定も20億年前って。むちゃくちゃすぎるだろ」 「いや、だから、それは」  星の間を飛んでいたからではないですか。優紀は上目遣いに上司を見るが、健太郎は不快そうに鼻を鳴らしただけだ。 「なんで古代の遺跡に紛れ込んでいるんだよ」 「さあ。昔の人は宇宙から飛来したそれをありがたがって、王の墓に埋めたとか」 「――」  優紀の最もらしい説明に、健太郎もさすがに口を閉ざす。そして、再び分子顕微鏡で撮った写真を見る。そこには、確かに何かメッセージのような列が並んでいる。しかし、これを解読するのは難しそうだ。仮に異星人からのものだとしても、この世界の言語ではない。 「どう、しましょう」  黙り込んだということは、本当に異星人からのメッセージと認めたはず。優紀がそう思って確認すると、 「握りつぶそう」  さらっと、さらっと凄いことを言ってのけてくれた。優紀は思わず仰け反ってしまう。 「ええっ。握りつぶすんですか」 「他にどうするんだ?物理学科に持って行くか?」 「うっ、じゃあ、ワンチャンあるかもしれないんで」  隣の学科に持ち込んでそのまま丸投げ。そちらの方が、優紀の気分的には楽だ。あちらで馬鹿にされる可能性はあるかもしれないが、握りつぶすよりはいい。 「ふうん。お前が持って行くんだったらいいよ。ただし、俺は歴史学科の教授に睨まれたくないんでな。他の出土品と同じ年代だったと説明しておく」 「は、はい」  こうして頼りの上司には先に逃げられてしまうのだった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!