始点

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始点

ゼロ地点に戻されることで、拡張された未来の記憶をなくしてしまう寸前、僕は自分の呟いた問いの答えを見つけた。 繰り返すことによって負荷がかかるなら、すでに悲鳴を上げている魂は、あとどれくらい保つだろう。 さらに何十回、何百回と繰り返せば、魂はぼろぼろになってしまうに違いなかった。 僕はベッドから起き上がれず、口も利けないほど疲弊(ひへい)してしまうだろう。 魂が壊れて死ぬか、死んだも同然となれば、拡張地獄から抜けられるのだ。 未来において悪意と憎しみをばら撒く脅威がなくなれば、拡張地獄の目的は達せられるのだから。 暗闇のトンネルを抜け、僕は帰ってきた。 全身をびくっと()け反らせて、ベッドの上で目が覚める。 「どうしたの、佳也。寝過ごしちゃった?」 美梨の声は眠そうだ。 先ほど情熱的に愛を交わしたばかりだから、疲れているのだろう。 僕は自分の胸をさすりながら、「長い夢を見た気がする」と答えた。 「だいじょうぶ、まだ夜明け前だよ。美梨、ゆっくりおやすみ」 妻の寝顔を見ているうちに、まぶたが下がってきた。 思いのほか、僕も疲れているようだ。 明るい未来を夢みて、僕は目を閉じた。 (了)
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