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「え、遠野(とおの)君。両性具有なの…?」
「あ、は、は、はいっ…!」
声が上ずってきょどってしまった。
まさか着替えを見られるとは。
しかも下半身素っ裸の状態で。
俺、遠野陸(とおの・りく)は両性具有だ。
ちんことまんこの両方がある。
しかし子宮はない。
なので生理はこないし、妊娠もしない。
このことを知ってるのは家族だけ。
父さんと母さん。
そして俺とは違って優秀な兄貴だけ。
家族は俺が芸能界に入るのを反対した。
『万が一脱ぐことになったらどうするんだ。そんな体と知られたら騒ぎになるぞ』
確かにそうだけど、下半身まで脱ぐ仕事なんてまぁこないだろうし、第一俺は芸能の仕事をやりたいんだ。
この、兄貴と違って勉強も運動もできず、顔だってまぁ月並みな俺に唯一舞い込んできたチャンス。
コミュ力だって普通だから、友達は数える程度しかいない。
だけど俺にスカウトの声がかかったんだ。
しかも大手事務所から!俺も人気者の仲間入りをするんだ!
親の反対を押し切って事務所に入り、30歳を過ぎた現在。
完全に売れず、事務所の不良債権になっている。
いつクビを切られてもおかしくない状態。
今日「いらない宣告」をされるかもしれない恐怖。
その日俺は学校教材の撮影で、教室を模した撮影スタジオに来ていた。
いつも通り用意された部屋で着替えをしていたら、突然ドアが開き、下半身を晒してしまった。
その日の俺は最悪なことに尿のキレが悪く、パンツを濡らしてしまった。
幸い代えを持っていたので、衣装変えのついでにこっちも変えてしまおうとパンツを脱いだら、突然ドアが開いて事務所スタッフの男と対面してしまった。
「…両性具有か…」
「すいません。気持ち悪いものを見せてしまって…」
そそくさとパンツを履き替え、黒のスラックスも履く。
しかし男性スタッフ(35歳独身。眼鏡に黒髪の真面目系青年)は難しい顔をしたあと、部屋を出て行った。
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