感動の再会

2/4
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「ハイ、カーット!!」  パッと明かりがついた。   先程までとは打って変わって厳しい顔つきの「初枝」は、「亮平」を睨み付けて怒鳴った。 「ちょっと、何でそんなところで噛むのよ!!」 「……さーせん」  ふてくされたようなその謝り方に、彼女の眉は更に吊り上がった。  これは不味い展開だ。  私は慌ててナレーションブースからセットの街並みがあるスタジオブースへと駆け下りた。 「申し訳ありません、お客様!! ご安心ください、テイク2行きましょう。無料ですから」 「……息子は変更できるのよね?」 「もちろんでございます。あちらで、あちらでお選びください」 「今度はきちんと面会して決めさせて頂くわ」 「はい、もちろんでございます。そのように手配いたしますのでご安心ください」 「それと、ナレーションが少しくどいと思うのよ。抑えめにして頂ける?」  渾身のナレーションにケチをつけられ、少しだけ心に傷が入った。  これでも精一杯盛り上げつつ、お客様が次の行動に迷わないよう気を遣って語っているのだが……。 「はい、畏まりました。おーい」  もちろんそれは顔には出さず、女性スタッフを一人呼びつけた。  「初枝」にもう一度指名用の写真を見せて「息子」を選んで貰うよう指示を出す。その時、実物と違いが大きい写真は抜け、というのも忘れなかった。 「じゃあ、ご案内して」 「はい。こちらへどうぞ」  女性スタッフに連れられ、「初枝」は鼻息荒くスタジオブースから退場していった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!