思いついた番号

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それは、十年近く音信不通にしていた、オレの実家だった。  その頃、実家では、両親が、こんなやりとりをしていた。 「なんだ? それは……間違いなくレイジなのか?」  父親は、あきれた顔で夕刊をテーブルに置いた。  母親は、夕飯の支度をしながら、 「ええ……。あの声は間違いありません。 なんか……オレオレ詐欺みたいな事を言ってましたよ」 「まったく、しょうのないヤツだな……。 ま、しかし、元気に帰ってきたんだ……。 十年ぶりになるのかな……」 「で、どうします?」 「二十万に、もう十万ブラスして払ってやれ。 どんなヤツでも我子が帰ってきたんだ。その祝いの代わりだ」 「はいはい」  二人は、笑顔で食事を始めた。  その頃オレは、ネットカフェでカップラーメンをすすりながら、 「絶対にヤバイ……オレ、絶対に警察に売られるな……。 まっ、いいか……。 そう、なったらなったで……」  そしてオレは、狭い空間で足を縮めるようにして寝た。
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