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「初めてあの家に足を踏み入れた瞬間の事を
憶えてる。
広くてキラキラして見えて…
タエコとリアムに対しても
初対面なのに身構えてしまう様な
怖さを感じなかった。
オーラは見えないけど、温かい光を
3人に感じた。
施設で紹介されてチェイスに会った時も…
人じゃないのかも知れないとさえ思った」
「魂は地球出身じゃないが…
俺の肉体はホモサピエンスだぞ」
「そうだよね。
里親になろうと施設に来て
子供を観察する大人は
まるで欲しい商品を探しに来ている様な目で…
とにかく、怖かった。
幼い時は何が怖いのかこんな風に
説明出来なかったんだけど。
施設でチェイスを紹介された時
裏庭のベンチに誘ってくれて
私に話しかけてくれたでしょ?
私がチェイスに対して思ったのは…」
ああ…その先を正直に言うと絶対に笑われる。
「もったいぶるなよ。
俺をどう思ったって?」
「笑わない?」
チェイスとリアムが同時に頷いた。
「あ…あのね…
このカッコいいお兄さんは実はHEROで
私をここから救い出してくれるに違いない
絶対ついて行く!って本気で思った」
しばらく沈黙が訪れた。
きっと2人はドン引きしたんだろうな。
堪えきれなかったのかリアムがプッと吹きだして
肩を揺らしてクックックッと笑いながら
「そのカッコいいHEROのお兄さんは
後部座席でゲップしてたぞ」
「ゲップはしたが屁はこいてねぇからな!」
「車内でこくんじゃない。
ホリー、そん時は容赦なく車から突き落とせ」
「俺の車じゃねぇか、所有者を突き落とすな!
リアムの正体はHERO抹殺を企む悪の手先で決まりだな」
涙が出るくらい笑った。
しばらく走るとチェイスがレストエリアで車を止めようと
言い出した。
どうしたんだろう。
車から降りる様に言われて外に出た。
車の前に来いって手招きされて
言われるがまま車の前に立つと
両側からチェイスとリアムがヒョイと私を抱え上げて
ボンネットの上に座らせてくれた。
チェイスがニッと笑って
「この空を見逃しちゃもったいない
こんな空を拝める時は
どんなに忙しくても急いでいても
手を止めて、立ち止まって俺たちは空を見るようにしてる
この日、この状況、この瞬間の空ってのは
二度とないんだぞ」
自分の過去と向き合って真実を知った今日
私の前に広がる幻想的な薄紫の雲に
ピンクサファイアが散りばめられた様なこの空。
胸が熱い、涙が出そう。
この世に生かされている事に感謝が湧いてくる。
「アンジーも一緒にこの夕焼け空が見られたらいいのに」
「ああ、そうだな」
「案外、近くで眺めてるかも知れないぞ」
陽が沈むのを見届けて、私たちは再び車を走らせた。
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