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「俺はグレースの言う嫌な予感ってのを
特に気に留めることなく…その…軽く考えて…だな」
「車の収納BOXに突っ込んでたのを見ただけで
それはわかる。どうせいつもの
俺は大丈夫って謎の自信でグレースの言葉を
気にも留めなかったんだろうよ」
「だったら、お前はグレースにもらったモリオンを
どう扱ったんだよ?」
「仕事ん時はアタッシュケースに。
帰宅したら取り出して寝室のサイドテーブルに置く。
今日みたいに休日に出かける時はリュックに。
大事に扱ってるよ。グレースのことだ。
ただのモリオンじゃなく
強力な呪文かなんかかけてるはずだ。
深紅のビロードも適当に包んでるわけじゃなく
意味があるんだろう」
バツが悪そうなチェイス。
そう、チェイスは時折
小学生男子みたいな、がさつなところがある。
学生時代なんか関心のない女の子からもらった
興味のないプレゼントとか
部屋にボンッと投げ放って忘れてしまう
そんなタイプだったんじゃないだろうか。
私の勝手な想像だけど。
けど私が幼少期に描いて
チェイスにあげた絵なんかは
箱の中に入れて捨てずに保管してくれてる。
リアムは私があげた絵をラミネート加工したりして
丁寧にファイリングして保管してくれてる。
そんな2人の違いがおもしろい。
魔女と聞いて素朴な疑問が頭をもたげた。
「あ…あのね、グレースは
これからも何百年も生き続けるの?」
2人が戸惑った。
「……どこまで娘に話しちまっていいんだか
難しいな」
「ああ」
そう言ってしばらく考えていたリアムが
「ホリー、何百年も生きる事を
グレースが望んだわけじゃない。
彼女の意に反して生かされた、と言う方が正しい。
やっと彼女の望みを自分で叶えたそうだ。
今、この現代のアメリカで生きている時間が
彼女のラストステージらしい」
「彼女が寿命が尽きる事を望んだ……の?」
「ホリー、近々グレースに会うことになると思う。
その時に彼女本人の口から色々聞かせてもらえ。
魔女についての話はここまでだ。
そろそろジジィの家だなリアム」
「チェイス…あれ、Dr.コナーの家の前に止めてあるやつ
レイチェルの車じゃないか?」
レイチェルの名前を聞いただけでドキドキしてきた…。
今まではこんなことなかったのに。
ああ、ほんとだ、メタリックブルーのHONDAのCIVICが見える。
レイチェルの愛車だ。
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