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私たちは車を降りて玄関に向かった。
すりガラスの窓に張ってある薄緑色のカーテンの内側から
温かい電球色の明かりが射している。
リアムが呼び鈴を鳴らしてしばらくすると
ドアが開いてDr.コナーが顔を出した。
「土曜日の夜だぞ…。
今から一杯やろうかと思っていたのに何の用だ?」
ああ…不機嫌そう。
「ちょっと腕をザックリやっちまった。
こいつは太腿。
今からサクッと縫ってくれ」
真っ赤に血で染まったチェイスの腕を見て
Dr.コナーは片眉を上げてチェイスとリアムの傷口を
観察している。
怒鳴られたらどうしよう…こっ、怖い!
でも2人が出血多量でどうにかなってしまうんじゃないか。
そう考えると、そっちの方がずっと恐ろしい。
涙目になってしまった私はうわずった声で
「あ…あの…お休みの日にごめんなさい…
お願いします!どうか2人の傷口の処置を…」
Dr.コナーの表情が少し和らいだ様に見えた。
お医者さんと言うより
トレンチコートを着た警部補で凶悪犯と渡り合っている
そんなイメージの方がしっくり来る。
ランニング姿でダイハードの主人公の真似も似合いそうだ。
けど優しそうな目元に人柄が表れていると思う。
瞳の奥に悲し気な光も感じるのは
たくさんの死と向き合ってきたお医者さんだからだろうか。
軽くため息をつきながら
「入れ。
キッチンの奥の扉が診療所と繋がっているから行け。」
そう言って招き入れてくれた。
家の中に足を踏み入れた私たちに気付いたレイチェルが
駆け寄って来た。
チェイスとリアムを見るなり
「ちょ…ちょっと…何事?!
チンピラかギャングと流血のファイトでもやらかしたの?」
チェイスは苦笑いしながら
「チンピラやギャングの方がよっぽど可愛らしいぜ」
肩をすくめたリアムが
「後で話してやる、縫合が先だ」
そう言ってレイチェルの肩をポンッと
叩きながらチェイスとキッチンの奥へ向かった。
レイチェルは私の肩をガッと掴むと
「ホリー、あんたは何ともないの?怪我してない?」
「あ…う…うん、大丈夫。どこも怪我してないし血も出てない」
「ああ…良かった。けど、2人があの状態だし
不安で怖かったでしょうに。
両手についてる血から察するに……
止血しようと頑張ったのね」
ぶわっと涙が溢れ出てしまった私を
レイチェルがぎゅっと強く抱きしめてくれた。
受け止めてくれる温かさに安心したのか
力が抜けてホッとしたけど涙は止まらない。
恥ずかしくてドキドキするのも止められない。
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