38人が本棚に入れています
本棚に追加
キョトンと私を見つめるアレックスが動揺して
「えっ… なんで?
なんでホリーが泣くのさ?」
「ああ… アンタはそこんとこ少し鈍いのよね。
まぁアスペルガーの特性っちゃそうね」
レイチェル…ストレートだなぁ。
リアムが説明を加えた。
「ホリーが泣くのは認知的、情動的共感力が高いからだ。
アレックスの立場で状況を理解したり
自分の事の様に感じて感情移入する力って言えば
なんとなくわかるか?」
「あたしに欠如してるとこだよね。
だけどなんであたしの立場に立って
泣けちゃうわけ?」
チェイスと私の目が合った。
(お前、言おうと思ったんだろ?)
(うん、チェイスから言ってくれる?)
アイコンタクトだけのやりとり。
チェイスがアレックスを真っ直ぐ見据えて
「アレックス、ホリーは場面緘黙だ」
「あっ、それで話さないんだ!」
「初対面のお前と愛想よくダチモードで会話するのは
ホリーにはハードルが高い。
ホリーも亡くなった人が視えるし
動物の声なき声をキャッチできる。
周囲から浮いて疎外感を感じる
やるせない気持ちが理解できるから泣いたんだ。」
「ホリー、あんた…あたし側なんだ!
単なるぽや~んとしたお嬢様じゃないんだね!」
彼女のあっけらかんとした毒舌に
苦笑いして頷くしか出来なかった。
「ぽや~んとしてるのは否定しねぇが、な。
やる時ゃ一生懸命やるひたむきな健気さがある!
それに、ぽや~んとしててもホリーは弱いわけじゃない
そこは言っておく」
チェイス… フォローしてくれてるんだろうけど
ぽや~んとしてるって… 2度も言った!
少しむくれた私に気付いたリアムが苦笑い。
アレックスに視線を向けると
「アスペルガーだのスペクトラム障害だの
症状に色々と名前が付くご時世だけど」
「う、うん、だけど何?」
「ADHDや
ASDに大きく発達障害が
分かれてるよね。
そういうタイプに天才的な科学者や芸術家にも多い事も
知ってるかい?
エジソンやビル=ゲイツ
スティーブ=ジョブズも然り。
NPになれるんだからアレックス
君だって相当、頭がいい。
KYな発言で人を傷つけやすいってわかってるなら
人の表情を見てから話す様に意識するんだ。
突然、明日からそんな風に変われやしないが
努力して積み重ねてごらん」
「あのな、アレックス。
俺たちだってみんな何か変なところを併せ持ってるぞ。
例えば、リアム。
プログラミングにかけちゃ天才的だが
要はITヲタク、ビョー的な完璧主義
サイコなハッカーと紙一重とも言える」
リアムの眉がピクッと動いた……
レイチェルはそれを見て
可笑しそうにクックックッと笑った後
「あたしだって、特に性別問わず相手の魂に惚れる
パンセクシュアルのカテゴリーだと思うし
女装するのも好きよ。
ここにいるみんな変人よ。
チェイスだって極真カラテの有段者と言えば
聞こえはいいけど、格闘大好き
鍛えるの大好きな異常者よ。
サイヤ人じゃないの?」
これにはチェイス以外全員爆笑した。
咳払いをしたチェイス。
「俺たちも全員、亡者やそのテが視える。
別に特別なことでも凄い事でも何でもない。
少々アンテナが性能良すぎる、単にそれだけだ。
安心したか?」
深い笑みを浮かべ頷いたアレックス。
とても綺麗な女性。
「まともに人と関わって話せた気がする。
なんだかズシッと重いジャケットを脱いで軽くなったみたいだ」
ちょうどその時
バタン!とキッチンから冷蔵庫を閉める音がして
Dr.コナーがビールを飲みながら
リビングのロッキングチェアに座った。
「アレックス、どうでした?」
レイチェルの質問にすぐに答えることなく
ビールを2~3口喉に流し込んだDr.コナー。
最初のコメントを投稿しよう!