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みんなシ……ンとして
Dr.コナーの言葉を固唾を呑んで待った。
Dr.コナーは軽く溜息をつくと
「縫合の腕は悪くない。
が!それだけで雇ってやる決め手にはならん」
「あ~あ。
あたし、ウェイトレスとかなんか仕事見つけなきゃ。
住む場所もなんとか確保しないと」
アレックスがそう言いながら
レイチェルを見た。
「ちょ…ちょっと!うちに居候する気?!
冗談でしょ、無理よ無理!」
「待て!」
Dr.コナーの声がした。
「話はまだ終わっとらん。
試用期間として1か月ここでやってみろ。
戦力になると判断したら正規雇用だ。
ナタリーがいなくなってからは
誰かを家に招くことなんかない。
バスルーム付きのゲストルームがあるから
好きに使え」
「あたし…ここに厄介になっていいの?」
Dr.コナーは再びビールを口にしながら
「ある程度、金が貯まったら
どこか部屋を見つけて借りろよ。」
アレックスと私は手を取り合って喜んだ。
「ね、ホリー。
Dr.コナーが言ってたナタリーって誰なのさ?」
10年前に亡くなられたDr.コナーの奥さん。
と答えたいけれど、だめだ…
喉の奥が締め付けられる感じがして
声が出ない。
緘黙を克服する道のりは長いだろうな……
「ナタリーは10年前に死んだ俺の妻で看護師だった。
あいつがいなくなってから
ずっと一人でやって来たがな…俺も歳だ。
一人で診療所をやっていくには厳しくなると感じていたところだ」
「良かったなアレックス。
変わり者同士、タッグを組んで診療所をうまくやっていけるさ」
「やかましい!
お前の腕は雑な縫合で済ませておくべきだった」
Dr.コナーとチェイスも歳の差はあるけど仲がいいなぁ。
叔父と生意気な甥っ子みたいだ。
「さて、帰るとするか。助かったよDr.」
「ああ、早く帰れ。
静かになってビールもうまくなる」
その時、私たち全員
Dr.コナーを見て…正確にはDr.コナーの後ろを
しばらく見つめていた。
私たち同じものが視えてる。
ロッキングチェアでビールを飲む
Dr.コナーの背後に立つナタリーが
彼の肩に手を置いて愛おしそうに微笑み
頬にキスした。
そして私たちを見て、ニッコリ頷いて消えた。
きっとアレックスとの出会いがDr.コナーにとっても
診療所がいい方向に進む、いい決断だった
そういうことだと思う。
一人でやっていたDr.コナーを心配していたんだろうな。
現世に留まっている魂と違って
眩しい光も放っていたから
光の世界にちゃんといる。
そこから夫を見守っているんだろう。
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