High Way To Hell

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 「今さ、後ろに…」 そう言いかけたアレックスの口をレイチェルが背後から抑えた。そして小声で  「Hush(しっ)!言わなくていいの、黙って」 あ、そうだった。 アレックス、考えなしに思った事を口に出しちゃう特性が…。 うかつに傍にいたなんて言わない方がいい。 愛する人が亡くなった喪失感から抜け出せない人や 魂の存在なんて受け入れられない人の神経を逆なでしてしまう事もある。  「ねぇ、ソファの横に置いてある アレックスのスーツケース。 あれゲストルームに置いてらっしゃい」 レイチェルがうまく話題を逸らした。  「あ、そうだね!Dr. 部屋はどこ?」 ノせられてすぐに切り替わるアレックス、可愛い。  「階段を上がってすぐ右にある部屋だ」 アレックスが2Fに行った。 私にはチャンスだ。 Dr.コナーの傍に行って勇気をふり絞った。  「あ…あの…もし良かったら」  「ん?どうした?」  「わっ…私に…基本的な応急処置のやり方を教えてもらえませんか? 日時はDr.コナーの都合に合わせます!」  「突然どうした?ホリー」  「今日…チェイスとリアムがあんな事になって 私…傷口と血を見て怖くて…何も出来なかった。 そんな情けない役立たずのままでいたくないんです」 Dr.が孫を見る様な優しい眼差しを私に向け  「ホリー、パソコンは得意か?」  「え…あ、はい。文書作成や入力は出来ます」  「午前の診療を終えて12:30から14:30までの2時間診療所は閉める。 その間、簡単な医療事務のバイトを頼めるか? ちょっとしたデータ入力だ、たいした事はない。 3日間だけでいい。応急処置のレクチャー付き2時間のバイトだ」  「やらせてください。ありがとうございますDr.!」 チェイスとリアムに相談なしに勝手に決めちゃった。 怒られるかな… みんなの所にすごすご戻るとチェイスが片腕で私を抱き寄せた。  「3日間だけ2時間のバイト……いい?」  「ああ、ここ数日で著しいたくましさを身に付けたな」 レイチェルが私の頭を軽くポンポンしながら  「日本のアニメ映画であったわね。 神様の銭湯がある世界に迷い込んだヒロインが ここで働かせてください!って言うあのシーンみたいで 健気で可愛らしかったわホリー」 アレックスが2Fからドドドッと降りてきて チェイスにくっついてる私を見るなり  「ねぇ…2人ってどういう関係? もしかしてパトロン?愛人?パパ活?」  「なわけねーだろ!アホかっ! ホリーは俺の娘だ」  「うそでしょ?チェイス、何歳?」  「33だ」  「めっちゃ若見えするじゃん!20代かと思ってた。 ホリーは何歳?」  「もうすぐ17だ」  「げっ!16で父親になったの?」  「悪いか」 あれ? チェイス私を施設から引き取った話はしないんだ。  「Awesome(イケてるよ)! で、リアムはどういう関係?」  「俺か?チェイスとは会社の共同経営者で ホリーにとっては親戚のおじさんみたいなもんだ」 アレックスはへぇ~っと言いながらチェイスとリアムを交互に見つめた後  「たぶん、チェイスが表に立って牛耳るボス的な役割で リアムが裏の参謀、違う?」  「悪の組織かよ…」 苦笑いしたリアムが  「表現はどうかと思うが、鋭いなアレックス」  「説明は出来ないんだけど雰囲気でピンとくる時もあるんだ。 ね、レイチェルはどういう繋がり?」  「チェイスとリアムは私の上司よ。 じゃあね、アレックス。 働き口と住む場所が同時に見つかって良かったわ。頑張ってね」  「色々ありがと、レイチェル」 アレックスがレイチェルに抱き着いて 頬に軽くキスしたのを見た時…… うまく言えないけど、なんだか心がざわざわした。 チェイスやリアムが他の女性と抱擁を交わしても こんな風に感じることはないのに。 やだ…こんな事考えるのはよそう。 レイチェルがここに自分の車を置いて チェイスの車を運転して私たちを連れて帰ってくれることになり 私たちはDr.コナーの診療所を後にした。
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