High Way To Hell

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 「あの子(アレックス)、巨大組織の総合病院じゃない方が合ってるかもね。溶け込めず生き辛かったと思うわ。 才女なんだけどね。あのパワーには付いて行けない、あれは悪意のない……」 数秒間、ためらった後、レイチェルが言葉を続けた。 『エナジーバンパイア』 この最後の単語はレイチェルの声にリアムとチェイスの声が重なって きれいにハモッて笑ってしまった。 確かにコロコロと話題が変わって、思いつくままあちこち動き、 心の声をダイレクトに口に出して早口で元気に喋る彼女と丸一日共にいるのは持たない気がする。 アレックスは頭の回転が速いんだろうな。 あ、そうだ。 チェイスに聞きたいことが。 えーと……傷口を縫った腕は…左手。 私はチェイスの右隣りにいるから大丈夫だ。 確認してチェイスの右腕を軽く揺すった。  「何だ?」  「アレックスに私を養女として引き取った話をしなかったでしょ。 年齢差から16でチェイスが父親になった衝撃的な設定を彼女信じちゃった」  「So what(それがどうした)?血が繋がってないとかそんなどうでもいい事をいちいち誰彼なく話すつもりはない。お前は俺の娘、真実だろ。 養女だとかそんな事を話す必然性があるのか?」 チェイスの立場を思うと気になって仕方がない事を話そうとした途端、涙目になってしまった。 泣かずに話せる強さが欲しい。  「私、チェイスが10代で女の子を妊娠させる様な無責任な人だと…うぅっ…誤解されてそう思われるのが……やっ…ヤダ!」 なんとか最後の方は声をふり絞れたけど、幼い子が泣きながら叫ぶ感じになってしまった。  私を抱き寄せたチェイスはニッと笑って  「そう思いたい奴らには思わせとけばいい。そいつらとお手々繋いで人生歩むわけじゃない、ただのギャラリー、通りすがりのポジションの奴らが大半だ。 それに、な。みんなに好かれるってのはまずあり得ない。好かれようとも思わねぇがな。俺の事をわかってくれてる奴がほんの一握りいるだけであとは敵でも十分強く生きて行けるもんだ。 しょーもない事に脳のエネルギー費やすんじゃねぇよ」 リアムとレイチェルは何も言わなかったけど満足そうに微笑んでた。 チェイスがもたれかかっている私の髪を優しく撫でてくれる心地良さと くっついてる温かさで眠気が襲って来る。 運転しているレイチェルを覗き込んだリアムが  「昨夜からあの子につきあって、お前もエネルギーが底をつきかけてるんじゃないのか?大丈夫か?」  「大丈夫よ。うちでは寝室に鍵をかけてあの子を遮断したから睡眠はしっかり確保出来た。今日も見えない距離もちゃんと確保して接していたから。 今日はそっちの方が大変だったはずよ。何かが起きたんでしょ?流血してる2人を見て確信した。あ、立ち入っちゃいけないならそれでいいんだけど」  「お前が教えてくれたホリーの中に巣くっている声もな…正体が誰なのか俺とチェイスは今日勘づいた。ホリーの幼少期から繋がって来るんだが。ホリー、レイチェルにお前の過去を話してもいいのか?」 リアムが私を振り返って訊ねてきた。 目をこすりながらもまだ私の意識はある。  「もちろん。レイチェルやタエコは私たちにとって特別な存在で家族同然だもの」  「レイチェル、リアムから聞いてくれ…」 チェイスが眠そうな声でそう言ったあと、あくびをした。  「家に着くまで眠ったら?安全運転で走行するから大丈夫よ」 チェイスの静かな寝息が聞こえてきた。 リアムとレイチェルの小さな話し声が心地良い。 瞼が重い… だんだん2人の声が遠ざかってぐっすり眠りに落ちてしまった。 帰宅後に衝撃的な展開が待ち受けていることも知らずに…
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