High Way To Hell

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 軽く揺すられて目が覚めた。家に到着したんだ。 私はチェイスの膝の上に突っ伏して爆睡していたらしい。 枕にしてしまったチェイスの足を隈なくチェックする私を見て (いぶかし)し気に  「何やってる?」  「よだれ垂れてないか気になっちゃって…確かめてるの」  「ああ、そう言えば、太腿に冷たい感触がじわぁぁっと 広がっていくのを感じた。ありゃお前のよだれだな」 石像化してしまった…… レイチェルの視線を感じた瞬間 恥ずかしくて耳まで赤くなるのが自分でわかった。  「ああああ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」 急いでバッグからハンカチを取り出そうとしたら チェイスがプッと吹き出して  「ウ・ソ・だ」 思わずチェイスの肩をペシペシ叩いてしまった。 今日は一言では語りつくせない体験をした一日だった。 我が家だ!ホッとする。 レイチェルは明日、Dr.コナーの家に車を取りに行くことに。 このままバスルーム付きのゲストルームに泊まってもらうことになった。 まず各自、自分の部屋のバスルームでシャワー浴びてから リビングに集合。 晩御飯はピザを注文しようかという案は 配達の人間に得体の知れない何かが憑依して やって来る可能性があるかも知れない、ということで却下。 私がカレーを作ることにした。 カレールーは日本ブランドのキューブ型を使う。 日本のカレー大好き。 我が家には日本の炊飯器もある。 シャワーを浴びる前にお米をセットしてスイッチを入れておいた。 急いでシャワーを済ませ、キッチンに立つと  「何か手伝うわ」 レイチェルがスッと私の隣に立った。 彼には冷蔵庫から野菜を適当に選んでサラダを作ってもらうことにした。 キッチンに一緒にいるなんてドキドキするけど楽しくもある。 包丁を手にカレーに入れる野菜を切る直前 何気に私が口にした一言。 それにレイチェルが反応した。 1d56cd77-28a1-4234-8d58-b0aa4b45e2d8  「え?ホリー、今何て言ったの?もう一度言って」  「えっ? ね…猫の手、ニャンって…。 包丁でカットする時にね、切る野菜や果物を左手で抑えるでしょ。 指先を切らない様に指を曲げて…ほら、これが猫の手、ニャン。 小さい時にリアムと一緒にキッチンで料理したくて包丁を使いたいって お願いしたの。数日後、子供用の小さな包丁を用意してくれて。 切る時は必ず指はこうやってだぞ!って教わって以来 私、切る前に必ず言ってから切る習慣が…」  「いい話ね。この家でしか見られない貴重なリアムの言動だわ。 猫の手ニャンだぞってリアムに言ってもらいたいんですけど! リクエストに応えてくれるかしら」  「断る!」 背後からリアムの声がした。  「俺も何か手伝おうか?ホリー」  「いいの!リアムはケガしてるんだから、 リビングで座ってのんびりしてて」 リアムの背中を押して強引にリビングのソファーに座らせた。 そこへシャワーを済ませたチェイスがユニクロのステテコとVネックTシャツ姿といういつものユルい家着姿でリビングに来ると  「悪い…縫った傷口に巻いたラップを取ってくれ、ホリー。 ジジィ(Dr.コナー)に入浴の時は傷口を濡らすなって言われたからな。 腕をラップでグルグル巻きにしてシャワーを浴びたはいいが… ラップを切った境がわからねぇ、どこだ?」 凝視したけど、境目が私にも見つけられない…どこだろ?  「ホリー、俺の腕をこねくりまわすな、地味に痛い」  「何やってんのよ…もぅっ。見せて!ちょっと、一体何周巻き付けたの? 案外おバカさんよねチェイスって」 レイチェルと私がチェイスを囲んで腕に巻いたラップを切った境目を探しているとリアムが冷ややかな視線を私たちに向けながら スッと無言でハサミを差し出してくれて解決した。  「ねぇ…ホリー、ちょっと焦げ臭くない?」 しまった! コンロでカレーに火を入れたままだった!! チェイスのせいで、鍋の底でルーが焦げて張り付いて…… ちょっと焦げ臭いカレーを出す羽目に。 食事を終えた後 レイチェルがSDカードを私たちに見せると 「車の中でリアムからざっとホリーの過去や今日の出来事を聞いた。 カメラって肉眼では捉えられないものを写す事があるでしょ。 時間が止まった時に何か映ってるかも知れないじゃない。 降りる時にチェイスの車からドラレコのSDカードを抜いて来た」 ドライブレコーダーの映像が録画されたマイクロSDカードが パソコンに繋がれると私たちは一斉に画面を覗き込んだ。  
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