Two Sides(月と太陽)

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 不安げな表情を浮かべて私たちを見ていたチェイスとリアムの方に アンジーが顔を向けた。  「悪霊やSEEDじゃあるまいし 私はずっとホリーにへばりついてられるほど暇じゃない。 この世界で務めを果たしている天界の仲間は国外にもいて ミーティングで集まることもある、チームで活動してるの。 天界にだって「ほうれんそう(報告 連絡 相談)」に行かなきゃ。 忙しいの。 それに、ホリーの人生における選択、意思決定は彼女のもの。 私は干渉しない、しちゃいけない。 2人共、ホリーがキケンに晒される事が一番怖いんでしょ、わかってる。 必ず護ってみせる、死なせるわけないでしょ。 ホリーの命の灯が消える時なんて、気が遠くなるほど先…」 ピピピピピピ 突然、アラームの様な音を出して アンジーの腕のアップルウォッチみたいなものが 黄色に点滅した。警告音だ……寿命に関して言ってはいけないってことかな。 けど、天界で働く天使たちもチーム制でミーティングがあって 上司(天界の上層部)に報告、指令を受けるなんて…… 私たち人間の住む娑婆世界みたい。 ヤバイッ…そんな表情をしながらアンジーは点滅とアラーム音を止め ソファから立ち上がるとゆっくり歩いて私の前に立った。 慈愛に満ち溢れた目で優しく微笑むアンジー。 思わず私も立ち上がって彼女を見つめた。 次々と幼かった私たち2人の思い出がリアルな温かさを伴って 私の中に映像として浮かんでくる。 記憶にない思い出のシーンはアンジーと私の魂がリンクして 彼女の記憶を共有しているらしい。 暗いクローゼットの中で抱き合って寝ていたシーンや お腹が満たされて嬉しくて笑い合っていたシーン。 あれはアンジーが男と母親のリアの目を盗みながら 食べるものを調達してくれていたと今日知った。 (レベッカが分けてくれた食料だったけど彼女と出会うまでは 盗んで命を繋いでくれていた) リアたちがいない時、アンジーと急いでバスルームに行って シャワーで洗ってもらった時の様子や ドライヤーの後、櫛で髪をアンジーに優しく梳いてもらっているシーンが 浮かんで見えた時、髪を梳いてもらうのが心地良くて大好きだったことも 思い出した。  「ホリー、生きていてくれて良かった。愛してくれる家族とめぐり逢えて 本当に良かった」 アンジーに抱き着きかったけど、実体のないホログラムの様で 身体をすり抜けてしまいそう…… だけど、どうしても姉に触れたくて… 手の平を重ね合わせようと、ゆっくり手を伸ばした。 アンジーは物悲し気な瞳で手を伸ばしながら  「ごめん… ここでは実体がないから 触れられない。人の温もりや感覚を味わうことは無理」 彼女の手はスッと私の手をすり抜けてしまった。  「だけどね、こうするとホリーの身体を通して 五感を感じることが出来る」 あっと言う間にアンジーが目前に迫って来たかと思うと 私と重なった。    
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