私は緘黙（かんもく）そしてお父さんが２人、お姉ちゃんは天使

Two Sides（月と太陽）

　落ち着かない様子でソワソワし出したアンジーが
チェイスとリアムを急かすように

　「ほらっ、私に聞きたいことがあったんじゃないの？
その件に関しては頼まれてもいないのに動けないの。
早く、早く頼んで！」

困惑しながらチェイスとリアムが顔を見合わせて
すぐにお互いが同時に

　「声っ！！」

　「子供の頃から時折、ホリーの中でイジワルな女の声がするらしい。
レイチェルから教えられて知った。
なんで気付いてやれなかったのか悔やまれる」

　「無理よ、だって声の主は狡猾(こうかつ)な女だもの。
二人の前ではスッとホリーの奥底に身を潜めて隠れていたんだから」

しばらく考えていたリアムは訝(いぶか)しそうに

　「ホリーには子供の頃から、かなり強力な護りのピアスをさせているのに
どうやって声の主は入り込めたんだろう？」

　「ホリーの為に2人が選んでくれたパワーストーンは効力あるよ。
ネットやそこらの店で簡単に手に入る様な石とは違うし
加工してくれた日本の陰陽師もホンモノ。
けど、その護りのピアスが逆にそいつをホリーの中で
パラダイス満喫させてしまったわけ。
ピアスが余計なものを弾いて外部からは何も入って来ない。
ピアスの効力で
ホリーから出ることは出来ない、ホリーをイジメたいから
外に出る必要もない」

　「ピアスをつけるより前にそいつはホリーの中に既に入っていたのかよ？」

　アンジーはフッと微笑を唇の上に浮かべると

　「養子縁組が成立した時からホリーに入り込んだ。
経済的に余裕もあってイケてる男にホリーが引き取られて
幸せになるのが気に食わない、そういう女よ」

　「俺もリアムもその女が誰だか察しはついてる」

チェイスとリアムが同時に口にした。

　「リア＝ハーディング」

キャミソール姿でドレッサーに向かい
唇に真っ赤なルージュを塗る後ろ姿が強烈に記憶に残っている母親。
顔はハッキリ覚えていなかった。
アンジーの失踪事件の記事をネットで見た時に写真を見た。
　「正解。さぁ、私にどうして欲しい？　言って！」

　「追い出せ、永久追放しろ」