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「実は…さ」
そう言いかけたアンジーが肩をすくめて
「声をチェイスに届ける手助けをしたのは私なんだよね。
試練をクリアしたアイザックは天界から
あの日のホリーとチェイスの出会いを見てた。
私も2人が繋がって欲しいと願いながら見ていた。
同じ想いで同じ光景を見てるもんだから天界で居る場所は違っても
通じ合うのよ。
天界の指導室みたいなところに呼び出されて怒られない程度に
アイザックの声の音量も相当絞って小さくして届けた。」
「……先生の目を盗んでルールを破るガキみたいだな」
「まぁ、そんなとこ。
アイザックの声をキャッチしてホリーを引き取るかどうかは
生きているチェイスの判断に委ねるしかなかったけどね。
彼のメッセージを続けるわ。
『ホリーが持つ魂の眩しい輝きやギフトは
素直でおっとりした平和な性格を歪めることなく
守ってやらなきゃ潰れてしまう。君じゃないと…
君とリアムじゃなきゃ彼女は育たなかったんだ。
他の人に引き取られていたら生前の僕と同じ道を辿っていた。
僕を救えなかったなんて思わないで。
ホリーがこんなにも愛されて幸せに彼女らしく生きている事で
僕の魂は安穏で一点の曇りもなく晴れやかだ。
僕も救われたんだよ。
チェイスに言っておきたい事がある。
いつもタフで懐の深い頼れる男じゃなくていい。
もう少し周りに寄りかかって頼って。
子供の頃から自分の心身のバランスには無頓着なのは変わらないね。
弱さを見せることが出来る者こそ真の強さを手に入れる。
大切な人の弱さってさ、迷惑じゃない、そこわかってるだろ。
チェイスありがとう。生前も肉体を離れた今も僕は君に救われた。
See ya up there 』」
しばらく静寂が訪れた後、アンジーが
「アイザックの今の役割を教えてあげる。
天界には人の手によって傷つけられたり
絶滅に追いやられた動物の魂を癒すエリアがある。
彼はそこにいるわ。
それともう一つ、チェイスに知ってもらいたい事がある。
アイザックが自ら命を絶った時……
彼の命の灯が消える最期の瞬間まで案じていたのは親の事じゃない。
チェイス、あなたの事だった」
スッと顔を上げ天井を見つめたままチェイスは身じろぎ一つしなかった。
やがて静かに目を閉じたチェイスの瞼から筋を引いて涙がこぼれ落ちて…
私も涙が止まらない。
チェイスにぎゅっとしがみついた。
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