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『植物に全く興味がなかったチェイスには
ボクの声が届かないし…もしかしたらボクは
放置されたまま朽ち果てて死ぬかも知れないって思ったけど。
意外とまめにお世話してくれたね』
ムスッとしたチェイスは
「俺なりに色々調べたぞ」
『うん。栄養剤のチューブを土の中にたくさん
突きたてられた時は栄養過多で気分が悪くなったな。
そんなに要らないって言っても、君には声が聞こえないし…』
リアムが爆笑した。
「雑で適当な部分は大人になった今も変わってない」
『大雑把で雑だったけど、君の優しさがボクのエネルギーを満たしてくれた』
「繊細さが微塵もなくて悪かったな!
唯一、あいつが俺に残した形あるものが金木犀だったんだ。枯らして殺さない様に必死だったさ」
『君のもとで無事にサバイヴできたボクも自分を褒めたい。
なーんてね。チェイス、ありがと。
……アイザックを失ってからは夜に声を殺して枕に顔をうずめて
よく泣いてたでしょ』
「……そこ…暴露するんじゃねぇ」
そう言った後、私たちの方を見たチェイスはバツが悪そうに
「14歳の頃の話だからな!」
『ボクも泣いてる君の傍でいっぱい泣いた。
でも懸命に君をHUGしたり頭を撫でたりしてたんだよ』
「時期外れなのにフワッと一瞬、金木犀の香を感じる事があったのは
お前だったのか。気のせいじゃなかったんだな。」
自然霊の男の子はニッコリ頷いた。
『君が育った家、あの一帯のエリアはあまりいい気が流れない場所。
霊道もあちこちにあった。居心地のいい街じゃなかったでしょ?
ボクもかなり頑張って浄化してたんだけど、キリがない土地だね。
早く離れて正解。ちゃんとボクも連れて出て行ってくれたよね。
ありがとう。』
自然霊の男の子は私の方を見た。
『立地も気の流れも最高のこの家に5歳の女の子がやって来た。
ホリーは秋にボクが花を咲かせる時期になると
香りが大好きだって窓を開けて窓際で本を読んだりお絵かきをしてたよね。
愛おしくってボクはホリーが大好きになった。
ナニーのタエコに金木犀は魔を祓うって聞いたチェイスがある日
ボクの前に立って、ホリーがこの家で安心して眠れるように
怖い思いをしない様に護ってくれって言ったんだ。
アイザックからチェイスにチェイスからホリーに、
大切な人への想いがボクにも繋げられてる。
この家も家族も、この家に集う人もボクは大好きだ。
だから全力で護り続けるよ』
瞬時に私の傍に来た金木犀の男の子が優しく私の頭を撫でて
頬にキスしてくれた。
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