閉ざされていた過去

7/82
前へ
/200ページ
次へ
 さぁ寝ようって段階で リビングの灯りをどうするか 少しもめた。  私は真っ暗じゃ寝られない。 温かみを感じる 炎のゆらぎを思わせる様な色の 間接照明があると、落ち着くから好き。  チェイスとリアムは 真っ暗にして寝たいって。 レイチェルはどうでもいいらしい。  結局、私が怖がると面倒だからって リビングの隅にあるフロアライトを 点けて寝ることになった。 それに目の悪い私が夜中に トイレに起きた時、下で寝ている3人が 踏みつけられて被害に遭うのも避けたいそう。 傍にみんなの気配があるのが心強くて 私は安心したのかすぐに眠りに落ちた。 朝の陽射しが差し込むキッチンで 私は朝食の準備をしている。 夢なんだってわかる。 自覚夢(じかくむ)って言うんだっけ。 ダイニングテーブルの椅子に 彼女が、あの天使が腰かけていた。 着ているドレスは私の部屋に現れた時と同じ だけど、背中の羽根がない。 私は朝食のベーコンエッグを焼いて お皿に盛りつけて彼女に出していた。 家族って認識になっている… 夢って、ツッコみどころ満載の あり得ない状況を 当然の様に受け入れてしまうのが不思議。 じっと私を見つめた彼女が  「驚かせて悪かったわ。 無理もないか…覚えてないわよね。」  彼女の瞳から目が離せなくなった。 なんだろう…この感じ。 この目を私は知っている気がする。 時とか場所、状況は思い出せないけど 泣きたくなるような切なさがこみ上げてくるのは どうして?  「一度だけ天界を抜け出して ホリーの背中を押したことがある。 幼稚園の卒園式だった。 この姿なら覚えてる?」 一瞬で彼女は7歳くらいの女の子に姿を変えた。 活発で聡明そうな顔。 でも瞳はアン・ハ〇ウェイっぽいのは同じ。 この子は… 思い出した!
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加