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私が座ったのと入れ替わりに
レイチェルが腰をあげた。
「私、席を外した方がよろしいかと思いますので
失礼します。」
えっ?
待って!
私を知らない人と二人にしないで!
無理だから、ホント無理なの!
と心の中で叫ぶと同時にレイチェルの袖を
ガシッと掴んでしまった。
優しい笑みを私に向けたオリビアは
「ホリーが彼女にいて欲しいなら
私としては問題はないわ。
専属で何年もあなたを見てくださってる
家庭教師なんでしょ。
あなたとスペンサー氏の信頼も厚いでしょう。
さっきお話させていただいて
緘黙の事も聞いたわ。
私、少しだけど緘黙については
知っています。
仕事が小学校の臨時教師なの。
少しずつだけど、教師の中にも
緘黙についての理解が
浸透していってるわ。
母はその症状について当時は知らなかったから
誤解したのね。今、わかったわ。
サイドテーブルの上にメモ用紙とペンがあるわ。
ホリーは知らない人とは書くことで
会話が成り立つから使って欲しいと
レイチェルが用意して下さったの。
言いたい事があったらそれで伝えて。
スペンサー氏、いえお父さんはお仕事よね。
たぶんそうだろうと思って、母から手紙を預かっています。
これ、お父さんに渡してくださる?」
逃げられたら困るから
レイチェルの袖を掴んだまま
手紙を受け取った。
レイチェルを見上げて、そばにいて!
と目で訴えたら座ってくれた。
ホッとした。
「ホリー、あなたは幸せですか?」
ダイレクトにオリビアが私を真っ直ぐ見据えて
質問してきた。
『正直に言って』そう彼女の目が言ってる。
嫌な目に遭ってるんじゃない?とも
言われてる様に感じてしまって
カチン!ときてしまった。
いささか乱暴というか雑?に
メモとペンをガッと取って
すごい筆圧で書いてしまった。
『最高のお父さんです!
同居のリアムも私にとってお父さんです!
二人はどんな私も受け入れてくれて
引っ張り上げてくれたり
後ろから落ちない様に支えてくれたり
連携して支えて育ててくれました。
お母さんがいない寂しさも感じたことがありません。
家庭教師のレイチェルもお姉さんの様で
大好きです。
私は本当に幸せです。』
バン!とオリビアの前にそう書いたメモを
叩きつけるように置いた。
読み終えたオリビアは
「質問で不快な思いをさせたようね。
ごめんなさい。力強い筆圧に
気持ちが込められているのがわかったわ。
母の決断が正しかった、それを伝えられる。
きっと喜ぶわ。
母から聞かされていたお話
そして謝罪を伝えますね。」
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