閉ざされていた過去

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 「もしかして私… みんなを起こした?」  「いや。 俺たちは早起きしてダイニングで ちょっと仕事の話を、な。 そしたら突然、お前の泣き声がして 慌てて飛んできた。 大丈夫か?」 チェイスのシャツ…染みがある。 何かこぼしたんだろうか。 胸元を見つめる私の視線に気づいたチェイスは  「ちょうどコーヒーを飲もうとしたところに お前の泣き声が響いて…だな。 驚いて手元が狂った。 洗濯すりゃいいさ。 おいで。」 上半身を抱き起して ギュッとHUGしてくれた。  「あのね…夢にあの天使が出て来た。 彼女、姿を子供に変えたの。 それを見て思い出した。 私、卒園式で彼女に出会ってる。 さっきまで見ていた夢は 私は小さな子供になってて。 私をかばってくれた女の子が 女性に引きずり回されて 虐待されて… 私、怖くて何も出来なくて ただ泣くだけで…。 そしたらチェイスに起こしてもらって 目が覚めた。 あの薄暗いアパートの部屋は 薄いけどずっと子どもの頃から セピア色の写真みたいな感じで記憶にあったの。 実在する部屋かも知れない。 あと… 不思議なんだけど アン・ハ〇ウェイっぽいあの天使の目 懐かしい気がして。 変だよね。」  「ホリーの夢の話は 記憶の断片が混在してるかもな。 パズルのピースっぽい。 調べたら色々繋がってくるんじゃないか? 明日から二日間は土日だろ。 俺たちは休みで家にいるから 過去が知りたいなら 調べてやろうか?」  「ほんと? 何があったのかどうしても知りたい。」  「閉じ込めて忘れていたトラウマを 呼び起こしたりすることもあるからな。 デリケートな問題だから、よく考えるんだぞ。 とにかく今日はレイチェルと留守番してろ。 チェイス、着替えてそろそろ 出る時間だ。」 リアムはきっと何か探し出して 見つけてくれそうな気がする。 すごいな。 探偵の仕事も出来そうだ。 ボーッと朝食を摂っていたら スーツに着替えたチェイスとリアムが 目に入った。  リアムは髪の毛を後ろで一つに束ねて チェイスはワックスで髪を整えてる。 目は悪くないのに、年配のクライアントと 交渉がある時なんかは 伊達メガネをかけるチェイス。 少しでも老けて見えるようにしてるって言ってた。 20代に見えるチェイス。 年配の方と交渉する時、不利なんだって言ってた。 9948b3b1-4145-43e4-a641-689425649918↑(大好きな絵師さん  ★★Giovanniさん★★ のイラスト 使用の許可をいただいております) 二人共、すごくキマってて エリートビジネスマンって感じだ。 シークレットサービスや捜査官にも見える。 スーツを着た仕事モードの二人は なんだか近寄りがたい 遠い存在に感じてしまう。  そんな私の気持ちを察知したのか リアムがニンマリして  「ホリー、俺たちは仕事用の(アーマー)を 装着してるようなもんだ。」  「なるべく早く帰る。 レイチェル、ありがとな。 ホリーを頼む。」  「この子が憑依されて ブ〇ックウィドウに豹変しないことを祈るわ。」 レイチェルは チェイスとリアムをHUGして見送った私を 横目で見ながら  「高校生くらいの娘ってさ… 父親に反抗して、口もろくに聞かないとか ふてぶてしい態度でHUGも嫌がるようなのが 多いんだけどね。 あんたはお父さんたち大好き、よね。」 そ、そうなのか…。 お父さんがウザくなるとか 私にはわからない世界だ。 アメリカの大半のお父さんは 娘にキモいとかウザいって言われてるんだろうか。  
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