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第三章 コーコ視点 とりあえず
結局、船の中に居た人は、酒場まで連れて帰った。その人が唯一持っていた『黒い棒』と一緒に。
近所の人が色々と協力してくれて、買い出しの荷物もまとめて船の中に入れて、雪の上を滑らせる様にして船を運んだ。
私とお母さんにとってはラッキーだったのかも、いつもの買い出しの帰り道より、結構楽に帰る事ができた。
午後の間ずっと屋根の修理をしていた父は、私が持って来た物を見て、屋根から落ちそうになる。
本来こうゆう人は、医者に見せるべきなんだけど、生憎今日は、村でただ一人のお医者さんが、別の村へ診察に行っていた。
帰って来る日も不透明だから、それまでは私の家で預かる事に。ウチは暖かくて大きな暖炉もあるから、そこにその人を寝かせてあげる。
私とお母さんは、温めたお湯でその人の体を拭いてあげた。でもその途中、お母さんが急に悲鳴を上げて、私を別の部屋に押し込む。
訳も分からずボーッとしていると、次に父が入って来て、お母さんが一体何に対して悲鳴を上げたのか、ちゃんと説明してくれた。
私はてっきり、髪が長いし、顔が女々しいから、てっきりその人が『女性』なのかと思っていたけど、実は『男性』だったらしい。
お母さんはこの事態に気づき、『事故』になる前に私を部屋から追い出したそう。
それを聞いた私は、最初は信じられなかったけど、お父さんの真剣且つ困った表情に、嘘偽りなんかではない事が、なんとなく伝わる。
確かに今考えると、あの人の体の作りは、女性にはあまり思えなかった。
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