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第四章 ヤマト視点 長い揺らぎからの目覚め
何だか、顔が冷たい。なのに体は温かい。
足が重い。いや、足だけではない、体も顔も頭も、全てが重い。
何も聞こえない無音の中、自分の体の中で、鼓動だけが慌ただしく騒いでいた。
その鼓動を聞いていると、途端に妙な恐怖に襲われ、自分はとりあえず、聞き手である左手を動かしてみる。
指を動かすと、指先にザラザラとした触感を感じる。足の指を動かしても同じ触感だ。
今度は口を動かすと、痛いくらい冷たい空気が喉から気管へ押し寄せ。咳き込んでしまう。
そして、自分が咳き込むと同時に、右隣の方向から、ボソボソとした人の声が聞こえる。声の感じから、2人の男女の様だ。
首を動かして、声の聞こえる方向を向こうとしても、まだ首は固まったまま動かない。
力んで体のあちこちを動かそうとしても、動く箇所もあるけど、動かない箇所が多い。まるで錆びた人形の様に。
強引に体を動かそうとすると、体のあちこちから鈍い音が響く。声は発せるけど、言葉にならない。
痛みに歯を噛みしめようとしても、口の中でさえも動かない。でも喉の中は枯れていなかった。
目蓋を開き、まず最初に目にしたのは、木材でできた天井。目線を下に向けると、ザラザラとした触感が、布団である事が分かった。
そして、さっきまで聞こえていた誰かの声が、だんだんと近づいている事にも気づく。
相手の事も分からないけど、自分に何が起こったのか、全く思い出せない。
どうして自分はこんな場所で眠っていたのか、そもそも此処が何処なのかも、全く記憶にない。
眠る以前の記憶を思い出そうとしても、何一つも思い出せず、突然恐怖と不安に駆られる。
不透明な不安から、自分は手元にある布団を握りしめようとする。すると、ザラザラとした触感とは違う、ツルツルとした筒状の何かが手に触れた。
自分は、動かない体をどうにか動かして、その筒状の物を手繰り寄せる。
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