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「きゃぁあああ!!!」
突然聞こえた悲鳴に、驚いた自分はその場から飛び起きた。あれほど重かった体が急に軽くなり、まるで金縛りが解けた様な開放感。
辺りを見渡すと、自分が眠っていた場所が、何処かの寝室である事が分かる。でもそれよりも、自分は窓の向こうに目を向けた。
外は眩しいほど降り積もった雪で、自分は一瞬目が眩んでしまう。
でも、その中で明らかに『異様な存在』が目に留まる。悲鳴の主は、腰を抜かしてその場から動けない女性だ。
『異様な存在』は、一見大型の鳥の様に見えたけど、よく見ると鉤爪の部分など、様々な場所がおかしい事に気づいた。
鉤爪部分は、まるで老いた人間の手首の様。頭の部分には、2つ有る筈の目玉がない。
その『異様な存在』は、腰を抜かした女性に対して、甲高い奇声を発しながら飛びつく。
自分は窓を開け、女性にしがみついている『異様な存在』に向けて、先程自分が掴んだ筒状の物で払い除ける。
その衝撃で黒い筒の部分が抜け、中からは銀色に照り輝く刀身が現れる。
刀を見た自分は思い出した、
自分の名前を、
そしてこの刀を。
これは、自分が愛用していた『刀』
『林刀(りんとう)』だ
それが分かった瞬間、体が軽くなったのを感じ、倒れている『異様な存在』に飛びつき、胴体に刀を突き立てる。
すると『異様な存在』は、口を大きく開けながら断末魔を響かせる。
よく見ると、開いているくちばしの奥には、大きな1つの目玉が、ギロリと自分を睨みつけている。自分は胴体から刀を抜き、口の中を再び突き刺す。
すると『異様な存在』は、まるで真っ黒な灰に体が変化して、雪風にさらわれて消えていった。
後ろを振り返ると、女性は茫然自失のまま、目の前が見えていない様子。
自分は倒れている女性の方へ行こうとするが、その瞬間、足に痛みが走る。よく見ると、足の裏からジワジワと出血していた。
咄嗟の事で全く気づかなかったけど、雪の上を裸足で走れば、当然足が雪の結晶で傷つく。
でも寒さで感覚が麻痺していたから、まさか自分の足跡にも血が染み付いているは思わなかった。
女性は混乱する表情で、「・・・足が・・・」と呟いた。自分は、「全然大丈夫ですよ」と言いながら、女性に手を伸ばす。
幸い女性は無傷で済んだみたいだ。自分の騒ぎを聞きつけた人々が、次々と家屋から出てくる。
自分は焦って黒い筒、『鞘』に刀身をしまう。そしてどよめく人混みの中で、1人の女の子が駆け寄って来る。
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