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第五章 ヤマト視点 疑問ばかりを抱えて
女の子は、『コーコ』という名前だそう。そして彼女と一緒に暮らしている夫婦は両親ではなく、親戚。
コーコさんが、幼い頃に両親を失った過去を話してくれた。でも、酒場の夫婦とは本当の親子の様だった。
でも自分はその話を聞いても、自分の両親の事など、何一つ思い出す事はできない。
自分の両親がどんな人だったのか、どんな職についていたのか、自分には兄弟か姉妹がいたかなど、全く思い出せず。
「・・・ごめんなさい、ヤマトさん
もしかしたら、私の話で、過去を思い出してくれるかなって・・・思ってた
んですけど・・・」
「・・・すみません
重苦しい会話をさせてしまったうえに・・・」
落ち込む自分とコーコさんを見て、2人の夫婦は明るく慰めてくれた。「じっくり時間をかければいいよ」と。
3人は自分の為に、色々と料理を作ってくれた。特にコーコさんが作ってくれた『赤いスープ』は、体も温まるし、お腹も満たされる。
その『赤いスープ』の名は、『ピロ』という名前だそう。
地元で栽培されている『プニド』という野菜を煮込んで作られる、スガー大国の伝統的な料理らしい。
食べ慣れない味だったけど、パンと合わせて食べたり、野菜につけて食べても美味しい。
そして、4人で食卓を囲んでいる間、自分は『2つ』だけ、自分の記憶を思い出していた。
「じゃあ、思い出した内容の一つは?」
「・・・自分の出身は、『ジパング』
東洋の島国です」
その言葉を聞いた瞬間、3人が声を上げて驚いていた。しきりに「本当?!」と言われたけど、自分には確証の無い自信だけがあった。
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