第五章 ヤマト視点 疑問ばかりを抱えて

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でもコーコさんは、自分の言葉を真っ先に信じてくれた。その証拠となったのが、自分の身に付けている服。 コーコさんや夫婦2人の身につけている服と、自分の服は、明らかに質も作りも違う。これは、自分がこの地ではない、異国の地から訪れた証拠となる。 そしてコーコさんの母の話では、自分の身に付けている服は、東洋の民族が身に付ける服に、少し似ているそう。 そして、自分が唯一持っていた愛刀、それも自分が異国から来た証拠の一つとなった。 改めてその刀をコーコさん達に見せると、コーコさんの父は真剣な眼差しで刀を凝視する。 まるで、骨董品などを鑑定する鑑定士の様に。その目はこころなしか、若干輝いて見えた。 コーコさんの父の話では、自分の持つ『刀』という剣の種類は、この国では見られない形らしい。 コーコさんの両親は、「ちょっと聞いてくる」と言って、それぞれ別の場所に向かう。 その間にコーコさんが、自分を見つけてくれた時の状況を詳しく話してくれた。 自分が乗っていた船が店の端に置いてあったから、自分はその船を確認した。 でも、どうやら自分と愛刀以外は、何も乗っていなかったそう。食糧などがあった痕跡も無いそうだ。 自分は、一体どのくらい海を放浪していたんだろう。自分の感覚では、『だいぶ長い間』としか例えられない。 コーコさんの話では、自分達が今居るスガー大国は、世界にある国の中で、一番の大きさを誇っているそう。 つまり、自分が世界中の何処から放浪したとしても、生きてこの地に辿り着くには、食糧などが必要不可欠。 自分の記憶が無い事もあるけど、放浪している間、何か食べた覚えなんてない。ただ、意識が朦朧としていた、それだけは何となく覚えている。 そこまで考えると、自分もコーコさんもちょっと怖くなってしまい、一旦コーコさんの家に戻った。 自分達が家に戻ると、コーコさんの両親2人が息を切らして先に戻っていた。そして、互いに得た情報を話し合う。 まずコーコさんの母は、近所で裁縫教室をしている人の家へ行き、東洋の衣装について聞いていたらしい。 すると、確かに自分の着ていた服は東洋の国で一般的に作られている服に似ているの。 だけど自分の来ている服は、細やかな場所がどの国の衣装にも見られない。 自分はコーコさんの父から服を貸してもらい、着ていた服をよく調べた。焦げ跡や破けた跡があるけど、結構複雑な構造だった。 そして自分は何故か、その服の正しい着方を覚えていた。覚えていたというよりは、無意識に頭に入っていた・・・の方が正しい。 自分の事が少しずつ明るみになるけれど、同時に謎も増えていく。 コーコさんのお父さんは、昔スガー大国の中心地で兵をしていた旧友に、『刀』について聞いていたらしい。 その旧友さんの話によると、自分の持っている『刀』は世界各国で出回り、結構高値で取引されるほど価値のある物。 でも、持ち主の誰もが、実際に鞘から刀身を引き抜き、戦う事は無いそう。立ち回り方を誰も知らないから。 つまり、自分が『刀』を持つ立ち振る舞いができたのも、自分の体や脳が、無意識に覚えていた証拠。 もう東洋の剣術を継いでいる人は、世界で指折り程度しかいないそう。でも何故か、自分に東洋の剣術を教えてくれた人の名は、覚えていないのだ。 心の奥底では、『大切な人』として認知しているのに、その人の顔も、声も、性別も、思い出せない。 自分は、急に強烈な罪悪感に襲われて、机の上に顔を突っ伏したまま、その場から動けなくなってしまった。 3人は自分を必死に慰めてはくれたけど、自分の心の闇が晴れる事はなく、結局自分の事がまだ曖昧なまま、その日は終わってしまった。
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